どうして怖がるのか マルコの福音書4章35~41節

2020年5月3日 飯能キリスト聖園教会 礼拝説教要約(若井和生 師)

 コロナ・ウィルスの脅威を覚える時、とても不安になりやすい私たちです。どうして私たちは怖がるのでしょうか。その恐怖と私たちはどのように向き合ったらよいのでしょうか。この不安な時期をどのように過ごしたらよいでしょうか。

【1】 弟子たちの姿
 ガリラヤ湖の舟の中で、弟子たちは大きな恐怖に囚われてしまいました。激しい突風が起こって波が押し寄せ、舟が水でいっぱいになったからです。人間の力をはるかに超える自然界の脅威に直面し、弟子たちは生命の危機を感じました。自らの死を意識せざるを得ない状況です。
 そんな中、弟子たちは船尾で眠っていたイエス様の下に駆け寄り、言いました。「先生。私たちが死んでも、かまわないのですか!(38)」。不満の矛先がイエス様に向けられていることがわかります。それまでイエス様に従順に従って来た弟子たちにしては、手のひらを返したような態度の豹変ぶりです。
 でも、それも致し方ありません。弟子たちはパニック状態に陥り、心は恐怖に囚われ、自制心を失ってしまいました。いのちの危険を感じる中、彼らの狼狽はイエス様に対する非難となって表されてしまいました。不安になると自制心を失いやすい私たち人間の姿をよく表しています。 
 今、コロナウィルス感染が拡大する中、感染した人々を排除したり、感染者を出した病院や医療従事者に対する風評被害が各地で起こっているそうです。感染は自然現象であり、感染者には何の罪もないのに、感染した方が悪者にされています。人間は不安に駆られると、すぐに犯人捜しをしたくなり、その不満のはけ口を求めてしまう。それもまた弱い人間の姿です。

【2】 イエス・キリストの姿
 イエス様はその時、どう対応されたでしょうか。まずイエス様はこの激しい嵐の中にあって、ぐっすりと眠っておられました。イエス様はその日一日、群衆の相手をされ大変お疲れだったわけですが、熟睡されていたのはそれだけではなかったでしょう。心に平安があったからこそ、眠ることができたのです。
 弟子たちにたたき起こされたイエス様は、起き上がると風を叱りつけ、湖に「黙れ、静まれ(39)」と命じられました。すると風はやみ、すっかり凪になりました。イエス様は自然界を支配されているご自身の力を現わされたのです。この姿は詩篇107篇29~30節などに記されている神の姿を表しています。イエス様はこの時に、ご自分が神ご自身であることを証しされたのでした。
 その後弟子たちに向かって問いかけました。「どうして怖がるのですか。まだ信仰がないのですか(40)。」イエス様は「どうして怖がるのですか」と言って弟子たちを叱りつけているように見えますが、これは恐怖の原因はどこにあるのか、という問いかけです。弟子たちはなぜ怖がっているのでしょうか。そして、私たちもなぜ不安になったり、恐怖に囚われたりするのでしょうか。
イエス様のことばによるとそれは「まだ信仰がない」からです。弟子たちがその時に恐れてしまった一番の原因は、彼らにまだ信仰がなかったからでした。この機会にそのことが明らかにされたのです。

【3】 主に信頼するために必要なこと
 先週の説教で、主に信頼したダニエルを神様は守って下さったことを学びました。では、私たちはどうすればイエス様に信頼できるのでしょうか。
 三つのことが必要です。まず自分自身の弱さをよく知ること、次にイエス・キリストの力強さ、素晴らしさを知ること、最後にそのイエス様が私たちのすぐそばにおられることを知ること。この三つを知ることによって、私たちは主に信頼する者に変えられていきます。
 そもそもこの出来事は「向こう岸へ渡ろう(35)」とのイエス様の提案から始まりました。このような機会を通してイエス様は、弟子たちを訓練していることがわかります。自らの弱さを知らしめ、ご自分がどのような方かを示し、その主が弟子たちのすぐそばにおられることを通して、弟子たちを主に信頼する者へと成長させて下さっているのです。
 最後に弟子たちは言いました。「風や湖までが言うことを聞くとは、いったいこの方はどなたなのだろうか。(41)」 イエス様に対して抱いていたそれまでのイメージが破かれ、イエス様の真の姿に触れた弟子たちの驚きがそこには表されています。
 今、私たちも本当に主を知る時ではないでしょうか。不安や恐れを抱く中にあってこそ、私たちはイエス様がどのような方であるかを深く知ることができます。そして、主に信頼する者へと変えられていきます。そのような導きの中に私たちが置かれているとするならば、この試練の時も信仰をもって感謝しつつ歩むことができるのではないでしょうか。試練の時を恵みの時として下さる神様に感謝しましょう。

【祈り】不安な時に強がることなく、正直に心をあなたに打ち明け、力強いあなたの御手に拠り頼むことができるように助け導いてください。