今の時の苦難、やがて啓示される栄光   ローマ人への手紙8章18~30節

2020年5月17日 飯能キリスト聖園教会 礼拝説教要約(若井和生 師)

 困難な時を平安をもって過ごすために、主イエス様との交わりは欠かせません。それに加えて聖書的歴史観をもつと、それがさらに大きな支えになります。大きな枠組みと広い視点が、私たちを直面する困難から守ってくれるからです。

【1】 今の時の苦難

 「今の時の苦難は、やがて私たちに啓示される栄光に比べれば、取るに足りないと私は考えます。(18)」

 パウロは「今の時の苦難は…」と語り、今私たちが生かされている時代は苦難であることを示しています。残念ながら、私たちはそれを認めざるを得ません。私たちの生活には、たくさんの苦しみと悲しみがあります。
クリスチャンになれば苦しみが軽くなるかと言えば、必ずしもそうではありません。むしろ信仰者ゆえの苦しみが多くあります。パウロが「私たちは、神の国に入るために、多くの苦しみを経なければならない(使徒14の22)」と語るように、またイエス様が「世にあっては苦難があります(ヨハネ16の33)」と語られるように、信仰者として多くの苦しみを私たちは経験しなければなりません。
なによりもイエス様の生涯が、信仰者の歩みとは苦難であることを私たちに示しています。よって私たちにとって苦難とは、偶然ではなくて必然なのです。

【2】 被造物のうめき
 苦難についてもう一つこの箇所より教えられるのは、苦しんでいるのは私たちだけではない、ということです。被造物全体が苦しんでいます。被造物は、切実な思いで神の子どもたちが現れるのを待ち望み(18)、虚無に服し(20)、滅びの束縛の中に囚われ(21)、そしてうめいている(22)と記されています。
 被造物とは神様が創造されたものすべてを表しています。山、海、川、森、動物たち、鳥たち、魚たち…などの自然界もすべて被造物です。その被造物が虚無に服し(本来の生きる目的を見失い)、滅びの束縛の中に囚われ(絶滅してしまうように定められ)、うめきの声をあげているというのです。
 アダムとエバがエデンの園で罪を犯した時に土地がのろわれ、人間の罪の影響が被造物に及んでしまったことが示されています(創世記3の18~19)。それ以来、被造物は人間の罪の結果として神ののろいの下に置かれ、うめき声をあげるようになりました。そして、そのうめき声が今、はっきりと聞こえるようになっているのではないでしょうか。
 人間の罪の深刻な影響が、山にも川にも海にも森にも、そして動物たち、鳥たち、魚たちの世界にも及んでいます。私たちもうめいていますが、被造物全体もうめいています。まさに私たちは「ともにうめいている」(22)のです。

【3】 やがて啓示される栄光
 しかし、このような深刻なことばはすべて、やがて来る栄光の事実と結び合わされ示されていることがわかります。今、私たちが経験している闇は、やがて来る光と直結しているのです。
しかも、今の時の苦難は、やがて啓示される栄光に比べれば「取るに足りない」と語られています。パウロはこの世の苦難を軽く見ているのではありません。ただ将来の栄光に比べる時に、その苦難が軽く見えてしまうくらい、やがて来る栄光が素晴らしい、ということを主張しているのです。
 大事なことは約束されている栄光と、私たちの経験している苦難とを比較することです。私たちは多くの場合、比較する対象を間違います。すぐに人と比べて自分の惨めさを募らせ、落ち込んでしまいます。比較するなら人と比べるのではなく、将来に約束されている栄光と比べなければなりません。
 やがて啓示される栄光の時とはどんな時でしょうか。神の子どもたちが現れる時(19)、被造物全体が滅びの束縛から解放されて自由にされる時(21)、私たちのからだが贖われて、私たちが神の子どもとされる時です(23)。私たちは苦しみから解放されるだけではなく、神の子どもとされ、自由になり、先に召されていった信仰の家族とも再会し、しかも同様に解放された被造物全体とともにその時を喜ぶのです。
 パウロは今の時の苦しみを「ともに産みの苦しみをしている」ということばで表しました(22)。妊娠された母親は、まだ赤ちゃんを見ていなくても、いつか見ることができるという希望に生かされています。その日が来るまでは忍耐しなければなりません。そして苦しみを経験しなければなりません。でも希望があります。その希望のゆえに、忍耐しつつ待ち望むことができるのです。
 私たちも今、産みの苦しみをしている最中です。その苦しみの中に希望があります。その希望を持ちながら、約束されている栄光の時を待ち望もうではありませんか。

【祈り】
 約束の希望に目を留めることができますように。そして苦難の中で、それに耐えうるだけの忍耐を日々、豊かにお与えください。