2023年４月16日　飯能キリスト聖園教会　礼拝説教要約（若井和生師）

　イエス・キリストが天に帰られた出来事をキリストの「昇天」と呼びます。十字架、復活と比べるとキリストの「昇天」の大切さは、あまり認識されていないように思います。しかし、キリストの昇天はとても重要な出来事です。使徒の働きがその大切さを表しています。
　「使徒の働き」はキリストの昇天の記事から始まります。キリストの昇天がなければ、その後の展開はありませんでした。もしキリストが天に帰られることがなかったならば、使徒の働きに記される神の素晴らしいみわざの数々は起こりませんでした。それを考えるとキリストの「昇天」がいかに大事な出来事であったかがわかります。

【１】 聖霊の派遣
　キリストの昇天がなぜ重要なのでしょうか。キリストが天に帰られた後、私たちに聖霊を送ってくださったからです。
　キリストの昇天の事実を伝える９節のみことばは「こう言ってから」ということばから始まります。このことばは９節の出来事が８節で語られたことばの直後に起こったことを示しています。イエス様は８節で何と語られたでしょうか。「しかし、聖霊があなたがたの上に臨むとき、あなたがたは力を受けます」と語られました。つまり「聖霊を受ける」ということばが、イエス様が弟子たちに託した最後のメッセージでした。
　またその一つ前の場面でイエス様は弟子たちに「エルサレムを離れないで、わたしから聞いた父の約束を待ちなさい。…あなたがたは間もなく、聖霊によるバプテスマを授けられるからです」と語られました（５）。これがイエス様から弟子たちに対して語られた最後の命令です。イエス様は自らの地上での生涯の最後に、一番大事なメッセージを弟子たちに伝えられました。それは彼らが聖霊を受ける、というメッセージだったのです。
　そしてイエス様が天に帰られた後、何が起こったでしょうか。聖霊降臨が起きました。弟子たちに聖霊がくだったのです（２章）。つまり、イエス様が天に帰られたのは弟子たちに聖霊を送るためだったのです。
　弟子たちにとっては目に見えない、とらえどころのない「聖霊」よりも、目に見えるイエス様がともにいてくださったことの方がよっぽど心強かったのではなかったでしょうか。そして私たちにも似たような傾向があるのではないでしょうか。神やイエス・キリストに比べると聖霊に関する理解が曖昧なために、聖霊なる神の恵みに気づかないでいることが多いのではないかと思います。

【２】 聖霊の祝福
　しかし聖霊はイエス様と同じくらい恵み深く、ある意味でイエス様以上に大きな祝福であることを覚えたいと思います。なぜならイエス様の私たちに対する関わりは外側からの関わりである一方で、聖霊は私たちの内側に宿られるからです。「この方は真理の御霊です。…あなたがたは、この方を知っています。この方はあなたがたとともにおられ、また、あなたがたのうちにおられるようになるのです（ヨハネ14の17）。」
　聖霊は私たちのうちにおられ、私たちを内側から満たし、内側から励まし、内側から導きます。私たちは聖霊によって「イエス・キリストこそ主である」と告白することができます。
　使徒たちに聖霊が下って何がおきたでしょうか。弟子たちが変わりました。彼らは死を恐れずに福音を伝える者となりました。教会が誕生しました。教会を通して多くの人々が救われました。そして福音は世界中に伝えられていきました。これが「使徒の働き」の内容です。これらすべては、聖霊が弟子たちに下ったことの結果でした。そしてその聖霊はイエス様が天に帰られたことによって私たちに与えられたのです。キリストの昇天の恵みを私たちは覚えましょう。

【３】 聖霊を待ち望む
　イエス様が天に帰られた後、弟子たちにすぐに聖霊が与えられたわけではありませんでした。聖霊が与えられるまで彼らは「待つ」必要がありました。そして彼らは待っている間、心を一つにして祈っていたことがわかります（14）。祈らざるを得ない心境だっただろうと思います。
　今まで心の支えだったイエス様を彼らは失いました。彼らは自らの中に欠けを意識したのです。その心の空白を埋めていただく必要がありました。そのために彼らは心を一つにして祈りに専念していたのです。そのような状態が1週間近く続きました。そしてイエス様の復活の50日後の五旬節の日に遂に、聖霊が彼らの上にくだったのです。
　聖霊が与えられることはイエス様の約束だったので、何もしないで彼らは待っているだけでもよかったのかもしれません。しかし彼らは祈りました。祈りながら約束の聖霊が与えられることを待ち望みました。イエス様の約束と、弟子たちの信仰が一つになった時に、聖霊降臨の素晴らしいみわざがなされたことを私たちは覚えたいと思います。
　もし私たちが、聖霊に満たされることに乏しいとするならば、その原因はどこにあるでしょうか。私たちの祈りが乏しいからではないでしょうか。約束の聖霊に私たちが満たされるように、私たちも心を注ぎだして祈ろうではありませんか。