耳のある者は聞きなさい         マタイの福音書13章1~9節

2023年1月15日 飯能キリスト聖園教会 礼拝説教要約(若井和生師)

 マタイの福音書13章のテーマは「御国の姿」です。イエス・キリストによってもたらされた天の御国がどのような国なのか、多くの譬えによって教えられています。その最初の譬えとして語られているのが「四つの種」の譬えです。この譬えで教えられていること、それは「聞き方が肝心」ということです。

【1】 道端
 種を蒔く人が種蒔きに出かけました。いくつかの種は道端に落ちましたが、鳥が来て食べてしまいました(4)。イエス様の解説によると、それは御国のことばを聞いても悟らない人のことです(19)。「悟らない」とは、「理解しない」という意味ではありません。それなりに理解し、納得もしているのでしょう。しかし、それは自分のこととして受け止められていません。せっかく理解しても、他人事で終わってしまうのです。
 私たちも私たちに語られるみことばを、他人事として聞いてしまうことがあります。主が自分に今語られていることばとして、受け止めないのです。その時には悪い者が来て、せっかく与えられたみことばを奪い去ってしまうのです。

【2】 岩地
 別の種は岩地に落ちました。芽が出ましたが、日が昇ると焼けて枯れてしまいました。根がないからです(5~6)。イエス様の解説によると、その人はみことばを喜んで受け入れました。それゆえに信仰の芽が出ました。ところがみことばのための困難と迫害が起こると、すぐにつまずいてしまいました(20~21)。表面の元気さの裏側に、脆さを抱えていたことがわかります。
 原因が二つありました。第一に、みことばがその人の心に根差していきません。第二に、もっと根本的な原因として心の中に岩がゴロゴロしています。砕かれていない古い自分自身が居座っているために、心の深いところで、みことばを受け入れることができないのです。自分の性質や強い自我から離れられないのです。
 この「石の心(エゼキエル11の19)」を取り除くためには祈りが必要です。みことばを聞く前にはよく祈り、砕かれた心、清められた心、整えられた心で、みことばに耳を傾けていきましょう。
 
【3】 茨の間
 別の種は茨の間に落ちました。芽を出して成長しましたが、茨が伸びてふさいでしまいました(7)。イエス様の解説によると、その人はみことばを聞いて、芽を出し、成長もしました。ところがこの世の思い煩いと富の誘惑がみことばをふさいでしまい、実を結ぶところまで行きませんでした(22)。
 「ふさぐ」と訳されていることばは「首をしめる」「窒息させる」という意味の強いことばです。私たちはどんな信仰者であっても、一旦心が思い煩いに捕らわれると、信仰がどっかに吹っ飛んでしまいます。それこそ、信仰が窒息させられたような状態になってしまいます。「思い煩い」とは、それだけ強いものなのです。
 その中でもとりわけ「富」に関する誘惑は大きいものです。私たちは明日のことが心配です。何を食べるか、何を着るのか、そのような生活の心配で心がいっぱいになってしまいます。
 しかしその思い煩いを主が取り除いてくださいます。「あなたがたの天の父は養っていてくださいます(マタイ6の26)」「あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい。神があなたがたのことを心配してくださるからです(Ⅰペテロ5の7)。」 思い煩いを神にしっかりと取り除いていただきましょう。その上で、みことばに耳を傾けていきましょう。

【4】 良い地
 別の種は良い地に落ちて、豊かな実を結びました(8)。イエス様の解説によると、その人はみことばを聞いて、悟る人のことです。聞くだけでなく、悟るところまで進みました。他人事としてではなく、自分自身のこととして受け止めました。そして、みことばをじっくりと味わい、みことばが心に根差すまで、そして芽を出し成長するまで、みことばを思い巡らせました。その人は本当に実を結び、しかも、100倍、60倍、30倍と豊かに実を結ばせます。
 さらにこの人はよく準備をして、みことばを聞いた人です。心の中にある岩や茨を取り除いていただいた上で、よく耕された心の状態で、みことばを受けとめた人です。その人はただ聞くだけでなく、聞いたみことばを行う準備があります。そして聞いたみことばを実践しながら、みことばの確かさを経験で学び、みことばに生かされていく人です。その人の歩みの中には、主の祝福の実が豊かに実るのです。

【5】 むすび
 イエス様は最後に語られました。「耳のある者は聞きなさい(9)。」 これは「聞こうとする意志をもって聞きなさい」という意味の命令です。私たちは果たして「耳のある者」でしょうか。「耳のある者」として聞いているでしょうか。その時に、私たちの中に御国が与えられます。よい心の状態で、「御国のことば」であるみことばに、耳を傾けていきましょう。