心を広くしてくださる方           詩篇119篇25~32節

2022年6月26日 飯能キリスト聖園教会     礼拝説教要約(若井和生師)

【1】 気落ちした時の助け
 詩篇119篇の著者が、どんな状況に置かれていたのかが少しずつ見えてきました。「私のたましいは、ちりに打ち伏しています(25)」「私のたましいは、悲しみのために溶け去ります(28)」。彼のたましいは、人々のそしりと蔑み(22)によってすっかり気落ちしてしまったことがわかります。彼は「私は地では旅人です」と告白しましたが(19)、旅人としての彼の歩みは厳しいものだったのです。
 しかし、そんな中にあって彼は何を求めたでしょうか。「みことばのとおりに私を生かしてください(25)」「みことばのとおりに私を強めてください(28)」。彼の口から生まれてきた祈りは「みことばのとおりに」というもの。みことばによってこそ生きる力を与えられ、強められることを彼は知っていました。だから、彼はまず、みことばを求めたのです。
 私たちが気落ちしてしまった時、私たちは何を求めているでしょうか。みことばが私たちに力を与えてくださいます。是非私たちも「みことばのとおりに」と祈る者でありたいと思います。

【2】 「偽りの道」から「真実の道」へ
 神のことばに対するこれだけ強い信頼をもっているこの詩篇の著者であるならば、彼の人生はきっと安泰だったのではないでしょうか。今日の与えられている箇所を読んでいく時に、必ずしもそうではないことに気づかされます。
 今日の箇所で彼は二つの道を意識していることがわかります。第一に「自分の道」を意識していました。「自分の道」とは、みことばのとおりに歩むことのできない道であり、同時にそれは「偽りの道」でもありました。彼は29節で「私から偽りの道を取り除いてください。みおしえをもって、私をあわれんでください」と神様に祈っています。信仰者である彼も「偽りの道」と呼ばれる道から離れられない苦しみを経験していることがわかります。それゆえにその道を取り除いてください、私をあわれんでください、と彼は祈るのです。
 彼はもう一つの道も意識しています。それは神とともに歩む祝福の道です。それは「あなたの戒めの道(27)」であり、「真実な道(30)」であり、「あなたの仰せの道(32)」です。自分の「偽りの道」が「真実な道」に変えられていくことを、彼は切望しているのです。
 そのために必要なものがみことばでした。そこで彼は祈るのです。「どうか、あなたのおきてを私に教えてください(26)」「あなたの戒めの道を私に悟らせてください(27)」「みおしえをもって私をあわれんでください(29)」。偽りの道に振り回されたり苦しんだりしながら、そこからの解放を求めてみことばを求め続けるこの詩篇の著者の祈りの姿が、ここに示されています。
 信仰者であれば、それで人生が安泰ということではありません。私たちはいつも「自分の道」に捕らわれます。「偽りの道」から離れられません。だからこそ私たちもいつも祈らなければなりません。私たちの道が、主とともに歩む祝福の道に変えられるように。そのためにみことばを求め、みことばに拠り頼む者になりたいと思います。

【3】 私の心を広くしてくださる方
 30節以降の詩篇の著者はそれまでと比べて、より前向き、積極的になっていることがわかります。「私は、真実の道を選びとり、あなたの定めを自らの前に置きました(30)」「私はあなたのさとしに固くすがりました(31)」「私はあなたの仰せの道を走ります(32)」。それまで彼のたましいは、ちりに打ち伏し、悲しみのように溶け去っていたはずなのに、ここに来て彼が走り始めていることに驚かされます。与えられたみことばの力を、彼が体験し始めていることがわかります。
 みことばによって彼は何を体験したのでしょうか。「あなたが私の心を広くしてくださるからです(32)」。神様がみことばによって彼の心を広くしてくださいました。それゆえに彼は喜びに満たされ、神の仰せの道を走り始めているのです。
 
【4】 むすび
 私たちの不幸の原因は、自分で自分の心を狭くしてしまう点にあるのではないでしょうか。パウロはコリントの教会の信徒たちに向かって「あなたがたの愛の心は、あなたがたの思いの中で狭くなっているのです(Ⅱコリント6の12)」と記しました。パウロはかつてコリントの教会に対して、罪を指摘する厳しい手紙を書きました。その手紙はコリントの教会の信徒たちに悲しみをもたらす手紙でした。罪を指摘されて、彼らは自分で自分の心を窮屈にしてしまったのです。
 パウロは「あなたがたも心を広くしてください」と何度も彼らに呼びかけました。パウロが彼らの罪を指摘したのは彼らを愛していたからであり、今も尚も愛していることを伝え続けました。その結果、彼らは神の恵みのゆえに赦されて、心広くされていきます。そして、パウロとの和解へと導かれたのです。
 神様はみことばによって私たちにその豊かな愛と恵みを示し、私たちの心を広くしてくださいます。私たちも是非、真実な道を選び取っていきましょう。みことばに固くすがりましょう。そして主の仰せの道をともに走ってまいりましょう。