過去に振り返り、未来に向かう     レビ記23章33~44節

2020年11月15日 飯能キリスト聖園教会 礼拝説教要約(若井和生師)

【序】
 信仰者としていつも神を信じ歩いていたいと願う私たちですが、いつもそうであるとは限りません。悩みと苦しみの中で神を見失ったり、忙しさの中にまみれて祈ることを忘れてしまうこともあります。
しかしそんな私たちでも一旦立ち止まって、今までの歩みを振り返ると、私たちの気づかないところで神様が私たちを守り導いて下さったことに気づかされることがあります。その時にはわからなかった苦しみや試練の意味も、後で振り返ってみた時に、すべて必要な経験であったと教えられることがあります。ですから私たちには立ち止まって、今までの歩みを振り返り、そこで見えてくる神の恵みを深く味わう時が必要です。

【1】 過去に振り返る
 神様がイスラエルの民に守るように定められた主の例祭の一つに、「仮庵の祭り」がありました。これは第七の月の15日に祝うように定められ、それは丁度、収穫が終わったことを喜ぶ収穫祭でした。この時に求められたこと、それは大いに喜ぶこと。イスラエル中の人々が、収穫の祝福を覚えて7日間、共に喜ぶのがこの仮庵の祭りの最大の特徴でした(申命記16の13~15)。
 同時にこれは、イスラエルの民がエジプトから救い出された後の40年、仮庵で生活した日々を忘れないためのお祭りでもありました。そのために彼らは木の実、椰子の葉や大枝、柳などで仮庵を作り、その仮庵での生活を一週間体験しました。この仮庵の祭りが、ユダヤ社会では今でも祝われています。
 荒野での40年間は、エジプトから救い出された恵みを見失ってしまうくらい厳しい40年でした。イスラエルの民は時々、水や食べ物がないと言ってはモーセを悩ませ、「エジプトに帰りたい」などと言い出す程だったのです。
 しかしイスラエルの主なる神様は、イスラエルの民を40年間、守り導いて下さいました。様々な危険からいつも彼らを守って下さいました。そして時かなって彼らを約束の地までちゃんと導いて下さったのです。イスラエルの民はその恵みを、仮庵の祭りを祝うことで毎年繰り返し覚え合ったのです。
 私たちにも仮庵の祭りのようなひと時が必要です。過去に経験した多くの苦しみや悩みの中に、実は主が共におられました。その時には気づかなかったけど神様は確かに私たちを守り導いておられました。私たちの経験した苦しみにはるかにまさる主の恵みがあるのです。

【2】 未来に向かう
 仮庵の祭りは同時に未来に向かっていくための祭りでした。イスラエルの民は荒野での仮庵での生活を続けながら、実は約束の地を目指していました。貧しい仮庵の生活を味わいながら、それが永遠ではないこと、必ず約束の地の祝福が待っていることを覚えることができたのです。
 ゼカリヤ書14章16節には、やがて諸国の民が仮庵の祭りを祝うために、エルサレムに上って来る様子が描かれています。仮庵の祭りが、やがて来る救いの完成の日を表していることに私たちは気づかされます。
 仮庵の祭りは、第七の月の1日に祝われる「ラッパの祭り」、さらに10日に祝われる「宥めの日」の次に祝われる祭りでした(24~32)。新約聖書と併せてこの記事を読む時に「ラッパの祭り」は死者の復活を表し、「宥めの日」は救いの完成を表し、「仮庵の祭り」はそれに続く大祝宴を表していることに気づかされます。イスラエルの民はこの仮庵の祭りを毎年繰り返し祝うことを通して、未来に向かい、救いの完成の日を待ち望む者とされていったのです。
 私たちの今の人生は借りの宿です。私たちは実は今、仮庵暮らしをしているようなものです。この生活が永遠に続くわけではありません。私たちの故郷は天にあり、いずれ天に帰るのです。やがてラッパの音が響き渡り、死者の復活が起きます。そして私たちの救いが完成して、天における大祝宴が開かれます。私たちはそのように約束されている未来を待ち望む者とされていくのです。

【3】 次世代に恵みを伝える
 このように仮庵の祭りはイスラエルにとって過去に振り返り、未来に向かっていくための祭りでしたが、もう一つの目的がありました。それは、かつて神様がイスラエルの民を仮庵に住まわせたことを、後の世代に知らせるという目的です(43)。つまり、その恵みを次世代に継承することが求められたのです。
 主の働きは世代を超えて引き継がれていく継続的なお働きです。それは一つの時代や世代によって細切れになってしまう一時的な働きではありません。過去に与えられた主の恵みを喜び、未来の祝福を待ち望み、その恵みを次の世代に分かち合っていくことで、私たちの働きが主の働きとされていくのです。
 過去に振り返り主の恵みに感謝しましょう。その上で未来に向かい救いの完成の日を待ち望みましょう。そして、この恵みを、次世代の子どもたちに引き継いでいきましょう。

【祈り】私たちの今までの歩みに主が伴って下さった恵みを深く味わい、救いの完成の日を待ち望むことができますように。その恵みを次世代の子どもたちと共に味わうことができますように。